
日本が誇る国宝・姫路城(姫路市本町)。戦禍を免れ、国内初の世界遺産に登録された名城は築400年を超えてなお、美しい城郭建築の姿をとどめる。地域の象徴であり、国内外から多くの観光客を引きつける姫路城の魅力とは。後世に伝えたい歴史的、文化的価値とは。3月1日の入城料改定(姫路市外の18歳以上2500円、全ての18歳未満無料)を機に、城に携わる人たちに聞く。
姫路ふるさと大使、タレント 田村淳さん
天守だけでなく門、櫓も維持
初回は「姫路ふるさと大使」で、タレントの田村淳さんに語ってもらった。

―姫路城の魅力とは。
現存する史跡の数が圧倒的。天守、門、櫓(やぐら)、城壁などが数多く残っている。見どころが多すぎるので、初めて訪れる人は見る場所を絞った方がいいと思う。
例えば、姫路城は国内でも数少ない(大天守と小天守を渡櫓でつなぐ)連立式天守のお城。このお城の形がなぜいいのか、どういう意味合いを持つのかなどを下調べして行くと、他の城との違いや姫路城のすごさが分かって面白い。
―姫路城は3月から18歳未満の入城料が無料になる。子どもたちに城の魅力を伝えるとしたら。
お城は天守だけでなく、周辺の「縄張り」も含めてお城。お城の入り口には必ず縄張りの図があるので見てほしい。姫路城の縄張りはかなり大きくて、残っている場所も多い。図は見て楽しんでも、見ながら歩いて楽しんでもいい。お城は天守だけじゃないんだよ、と知ってほしい。
―姫路市の要請を受け、昨年「姫路ふるさと大使」に就任。姫路城の魅力を発信している。
姫路城は当時のお城の姿を理解するのに一番適していると、いつも友人らに話している。門や櫓などを維持するのは大変。天守だけを残し、その他の建造物を取り壊してしまったお城は多い。本当のお城を味わいたいなら姫路城だ、と世界に発信したい。
「観光しやすいように階段を上りやすくしてほしい」という声に応えると、歴史的価値を失ってしまう。姫路城は多くの観光客を迎えながら、当時のままの状態を極力残している。そうした点は、もっと評価されるべきだ。当時の姿を維持するためにいかに尽力しているかを、観光しながら味わってほしいなと思う。

田村淳(たむら・あつし)さん略歴 1973年、山口県出身。タレントとしてバラエティーや経済、情報番組など多ジャンルの番組に出演。芸能界きってのお城好きとして知られ、2025年に「田村淳のお城の歩き方~マンガでタイムスリップ! 対決!! 日本の名城~」を刊行した。同年、「姫路ふるさと大使」に就任。

日本初の世界文化遺産・国宝姫路城の崇高な美しさは長年にわたり、さまざまな職人たちが支えてきた。高度な技術と使命感で、城の美を守ってきた地元の2社の社長に、姫路城への思いを語ってもらった。
山脇組社長 山脇一夫さん
こだわりが職人の誇りに

祖父の代からの左官業で、姫路城の定期点検に伴う小規模な修理をずっと担当してきた。「昭和の大修理」は、それまで蓄積してきた技術をさらに高め、集大成する機会になったと思う。自分自身も姫路で生まれ、城の美しさを守りたいと思いながら育った。
文化財の修理は、先人の仕事をそのまま伝えるのがルール。しかし漆喰(しっくい)の素材の中には、入手しにくくなった物がある。例えば、乾きを遅くして作業性を高めるための「のり」は北海道産の「クロギンナンソウ」という海草の煮汁で作っていた。近年は外国産か他の海草を代用せざるを得なくなった。慎重に試しながら質を見極めている。
課題は、後継者の育成。城の漆喰の定期的な修理は、一部の職人だけに任せるのではなく、みんなが経験できるようローテーション制にしている。この世界で働くのは、こだわりが強い人が望ましい。例えば道具のコテでも、専門のコテ職人が鍛造したものを選び、さらに特注して改良する。こうしたこだわりが、職人の誇りにつながる。
学校で出前授業をすると、小学生はみんな関心を持ってくれるが、学年が上がると、徐々に反応が悪くなる。高校生で関心を持ってくれるのは、圧倒的に女子が多い。すでに女性の職人も働いており、今後は女性が長く活躍するためのノウハウづくりも必要だ。今年1月にベテランの職人が退職し、昭和の大修理の経験者が、ついにいなくなった。次の大修理にも何らかの形で参加できるよう、技術を伝えていきたい。
山脇組(姫路市飯田)は1933(昭和8)年創業。姫路城「昭和の大修理」で漆喰塗りを担当し、「平成の大修理」では施工業者の技術指導に当たった。2005年に3代目社長に就任。
光洋製瓦社長 笹田奈都子さん
観光客魅了する職人の魂

「会社を残すより、人を残す」という思いで、仕事に取り組んできた。瓦製造から施工までの一貫した技術をそろえる会社は全国でも珍しい上、「鬼師」という鬼瓦を手作りする特殊な技術の職人も擁していることなどから、姫路城の仕事でお声かけいただいた。この仕事は技術の継承が肝なので、「大修理」では、世代の違う職人たちが共に取り組むことによって、若手にも経験を積ませることができた。
職人たちは、城からわき上がる独特の空気を感じながら働いた。厳しい工期で失敗が許されない中で、城の守り神である鯱(しゃち)瓦を無事に完成させた時のことは、忘れられない。城に納める際は「無事に城を守ってください」と手を合わせた。
職人の技術は文章にして伝わるものではなく、人の中に残る。大修理の経験から、目に見える仕事だけではなく、「魂」の大切さを学んだ。城を訪れるお客さまが感動するのは、職人が城に残した「魂」の力だ。
過去にしがみつくだけではなく、将来の夢につながるよう、瓦の技術を生かしたインテリア壁材・床材などを新開発し、世界中に販売している。また工場をオープンし、見学・工作体験や瓦職人と触れ合う事業も展開しているが、職人や技にスポットを当てたニーズに応える取り組みが社会的に増えればいい。
光洋製瓦(姫路市船津町)は1923(大正12)年創業。姫路城「平成の大修理」で、瓦の製造・ふき替えを担当した。笹田さんは2001年、4代目社長に就任。

世界文化遺産・国宝姫路城の価値を守るため、保全・改修や魅力の発信に取り組むボランティア、研究者、ガイドの3人に、それぞれの活動を通じて感じることや、姫路城に寄せる思いを語ってもらった(文中敬称略)。
世界遺産・姫路城を守る会会長 岡本一さん
姫路市立城郭研究室 城郭研究専門員 三角菜緒さん
姫路城シルバー観光ガイド 安部安雄さん
―日頃の活動内容は?
岡本 「世界遺産・姫路城を守る会」は「昭和の大修理」から4年後の1968年に結成され、現在、約400人が所属している。私は2000年に入会し、昨年4月、3代目の会長に就任した。主な活動として、清掃など城の維持・管理への協力、献茶式をはじめ城郭講座など各種歴史・文化継承事業の実施、広報冊子の発行、他城視察を通じた研修などに取り組んでいる。また城に関わるさまざまな団体との調整や、会員間の親睦にも努めている。
三角 姫路藩主だった酒井家の古文書を中心に、姫路城や姫路藩の歴史を調査・研究している。また講演会や現地見学会などを通じて、城の魅力を伝える仕事をしている。
安部 登城者の申し込みに応じ、城内の見どころなどを1時間半から2時間、案内している。料金以上の満足感を得ていただこうと、城に関するさまざまな話題を用意している。登城者の質問に答えられるように勉強しているが、特に子どもの素朴な疑問は意外と難しく、逆に新たな発見につながり、日々、研さんを重ねている。
周辺の町並みも楽しんで 岡本

登城客も次代への支援者 三角

無限の魅力若者も感じて 安部

―姫路城の魅力と、入城者への要望があれば。
岡本 2022年から始まった姫路城プレミアムナイトツアーは闇夜の大天守へ貸し切り入城し、非公開エリアの見学など唯一無二の体験ができると人気だが、お城を巡るツアーは時間帯や予算などいろいろなパターンがあるといい。また城だけでなく、周辺の小道や町並みをもっと楽しんでいただきたい。
三角 姫路城は城郭や石垣が残っているため、城自体への関心が高いが、姫路藩や城下町の歴史も面白い。
最近は、城を木造復元する動きが盛んになっている。その中で城郭研究室所蔵の「昭和の大修理」で作成された図面が役に立っている。古文書や絵図、修理記録にも関心を持っていただくとうれしい。
これほどの美しい状態で城があるのは、歴代の城主が修復を重ねてきたおかげ。そして姫路の人たちがそのバトンを受け継いできたからだ。登城者の皆さんも、城を次世代につなぐサポーターになっていただければありがたい。
安部 姫路城は情報のテーマパークといえるほど、無限の魅力を持っており、同じお客さまが短期間に2回訪れても、全く違う話題で案内できるほど。例えば修復作業をしている人を見れば、城を守る技術の奥深さもイメージできる。
つまり城は、人間の可能性をはじめ、さまざまなメッセージを発信してくれている。こうした多様な価値を、若い人たちにも感じてもらいたい。

シェーンブルン宮殿(オーストリア)最高経営責任者
クラウス・パンホルツァー氏に聞く
共に国が誇る世界遺産/持続可能な保存促進/姫路市との文化的関係強化
「世界に輝く姫路城」を目指し、姫路市は近年、海外の名城との姉妹城提携を進めている。2025年の1年間だけでもシェーンブルン宮殿(オーストリア)、プラハ城(チェコ)と提携し、観光、経済、文化、教育、平和など幅広い分野での交流が期待される。城を核にした関係強化の狙いや今後期待することについてシェーンブルン宮殿の最高経営責任者(CEO)に聞いた。

―シェーンブルン宮殿と姫路城の姉妹城提携の背景と目的について教えてください。
シェーンブルン宮殿と姫路城は、その卓越した文化的・歴史的価値と後世に残すべき意義を有し、どちらもユネスコ世界遺産に登録されています。それらは地域の歴史に深く根ざしており、地元の人々から地域の象徴と見なされています。
シェーンブルン宮殿はオーストリアで最も重要な文化的ランドマークの一つであり、姫路城が日本で特別な地位を占めているのと同じです。姉妹城の提携は、文化遺産の保存と文化交流が密接に結びついているという共通の理解に基づいています。
このパートナーシップの確立により、シェーンブルングループと姫路市は長期的な協力、相互学習、対話の促進を目指しています。知識、歴史、文化的視点の交流を通じて、オーストリアと日本の友好と親善を深め、持続可能な保存活動と国際理解の促進を図りたいと考えています。

―姫路城はオーストリアでどれくらい知られていますか?
オーストリアの一般市民が姫路城にどれほどなじみがあるか正確に判断するのは難しいですが、近年では認知度が着実に高まっています。特に、2024年11月のオーストリアでの基本合意と25年5月の姫路市での姉妹城提携調印式に関するオーストリアのメディア報道が、その認知度向上に大きく寄与しました。オーストリアでの式典はシェーンブルン宮殿の歴史的な部屋で行われ、姫路市長も出席してこのパートナーシップの重要性を強調しました。
ユネスコの世界遺産であり、日本の豊かな文化遺産の象徴である姫路城は、歴史、文化、国際交流に深い関心を持つオーストリア国内で特に高く評価されています。
―シェーンブルン宮殿の魅力は。
世界遺産のシェーンブルン宮殿は、オーストリアで最も多くの観光客が訪れる観光地です。宮殿と庭園から成るこのバロック様式の芸術融合は、その大部分が今もなお当時の歴史的な姿のまま体験できます。皇室が実際に使用した宮殿の居住区や公式の応接室を巡る見学ツアー、宮殿公園内の迷路庭園や子ども向け博物館など、多くの見どころが訪問者を待っています。

―ウィーンと姫路市の今後の交流や関係強化についてどのようなことを期待しますか?
予定されているハイライトの一つは、28年の「姫路国際ヴァイオリンコンクール」優勝者によるシェーンブルン宮殿での演奏で、音楽を通じた文化交流の象徴となります。さらにデジタル化、世界遺産の管理、文化仲介などの実務的、専門的な分野で協力を深めることを目指しています。継続的な対話と相互学習を通じて、今後ウィーンと姫路市の組織的な結びつきを強化し、文化的関係をさらに発展させたいと考えています。
海外と姉妹城提携 続々と/姫路城新料金 保存の財源に
海外の名城との姉妹城提携は、1989年のシャンティイ城(フランス)を皮切りに2019年のコンウィ城(英国)、24年のバベル城(ポーランド)など五つの城に上る。

25年の姉妹城提携は、両国の大統領が来日し、締結式の立会人を務めた。オーストリアのアレクサンダー・ファンデアベレン大統領は「姫路城は広く公開しながら保存している。提携でさらなる知識を得られる」とし、チェコのペトル・パベル大統領は「文化価値の尊重、職人の技に対する敬意など多くの共通点がある」と強調。400年以上、往時の姿をとどめる姫路城のノウハウの取り入れや知見の交換に期待を寄せた。
姫路城は世界遺産としての価値を守り、次世代へつないでいくための財源として、3月1日に入城料を改定した。事前予約できるデジタルチケットも導入し、観光客の利便性を高める。
姫路城は計画的な修理による「保存」と、職人技の「継承」を両立させてきたが、姫路市は今後、石垣の耐震化などの事業費を10年間で約280億円と見積もる。財源を賄うため、入城料を市民については18歳以上を改定前と同じ1000円とする一方、市外者は2500円に、新たな料金体系となる年間縦覧券を5000円とした。
その上で、18歳未満については「木造建築や城の防御を学ぶ教育文化施設」(清元秀泰市長)として居住地を問わず一律無料にし、楽しみながら理解を深めるパンフレットも新たに作った。
同時に、試験導入していたデジタルチケットの運用を本格化させる。「しらさぎチケット」として入城日時の予約機能を持たせ、繁忙期の混雑緩和や炎天下のスムーズな入場につなげる。販売サイトでは、隣接する姫路城西御屋敷跡庭園・好古園や市立美術館、姫路文学館の入場券も購入でき、観光客の周遊を促す。
姫路城では安全対策も強化し、入城者全員に靴や手荷物を入れるナップザックを配り始めた。これまでのレジ袋では片手がふさがり、階段で転んでしまう恐れがあったためだ。ナップザックは持ち帰りの記念品としてデザインにもこだわっている。
また姫路観光コンベンションビューローは、有償ガイド事業「姫路観光コンシェルジュ」を始め、専門知識を持つ認定ガイドが姫路城の文化価値や市内の多彩な魅力を発信。人を介した質の高いサービスの提供により姫路滞在の満足度を最大化し、世界的な観光地としての地位向上を目指す。

入城料の見直しという転換点を迎えても、「白亜の名城」はこれからも輝き続ける。
姫路城は、兵庫県姫路市に位置する、日本の城郭建築を代表する存在です。 白漆喰で塗り込められた優美な外観から「白鷺城(しらさぎじょう)」の名でも親しまれています。
1993年、日本で初の世界文化遺産の一つとして登録され、現在もなお、往時の姿を色濃く残しています。 大天守をはじめとする8棟が国宝、さらに74棟が重要文化財に指定されています。 大天守は五重六階構造で、三つの小天守と渡櫓で連結された「連立式天守」が特徴です。機能性と美しさを兼ね備えた、日本城郭建築の傑作といえます。
姫路城の起源は南北朝時代、赤松氏によって築かれた砦に始まるとされています。 戦国時代には羽柴秀吉が入城し、三層の天守を築きました(現在の天守とは異なります)。
その後、関ヶ原の戦いを経て池田輝政が城主となり、約8年の歳月をかけて現在の壮大な城郭へと大改修が行われました。幕末の動乱や第二次世界大戦の空襲など幾度もの危機を乗り越え、奇跡的に焼失を免れたことでも知られています。
姫路城は、日本独自の防御機構と美的意匠を高度に融合させた木造建築の到達点といえます。 天守のみならず、門・土塀・櫓など江戸時代初期の建築群がほぼ完全な形で現存しており、その保存状態の良さは世界的にも極めて貴重です。
また、城内には敵の侵入を防ぐための複雑な動線、鉄砲狭間や石落としなど、実戦を想定した高度な防御の工夫が随所に見られます。
大天守の威容
姫山の標高と建物を合わせて約92メートル。天守からは播磨平野を一望できます。

西の丸と千姫の物語
徳川家康の孫娘・千姫が過ごした西の丸や化粧櫓は、歴史の情緒を今に伝えます。
四季折々の景観
春の桜、秋の紅葉、冬の雪景色など、白亜の城は四季の彩りと美しく調和します。
瓦に刻まれた歴史
屋根瓦には歴代城主の家紋が残されており、時代の移り変わりを静かに物語っています。
姥が石
石垣築造の際、石不足に悩む城主に対し、老女が石臼を献上したという逸話が残されています。これをきっかけに多くの人々が石を寄進したと伝えられています。
お菊井戸
怪談「播州皿屋敷」の舞台とされる井戸で、歴史と伝承が交差する象徴的な場所です。
姫路城では、四季を通じて多彩な催しが開催されています。
姫路お城まつり:姫路を代表する初夏の市民参加型イベントです。歴史パレードや薪能、総踊りなどが姫路城周辺で開催されます。
次回(第76回)開催予定:2026年(令和8年)5月15日(金)~5月17日(日)

城の日(4月6日)記念行事:4月6日の「城の日」前後の1週間、姫路城周辺の文化・観光施設の無料開放や観桜会が行われます。
千姫ぼたん祭り:三の丸広場北側の「千姫ぼたん園」で見頃を迎えるぼたんの花を楽しむお祭りです。
世界遺産姫路城マラソン:例年2月に開催される、姫路城をゴール地点とする大規模な市民マラソン大会です(2027年度は会場工事のため中止)。
ライトアップ:特定の啓発運動に合わせ、大天守を通常とは異なる色(ブルーやピンクなど)で照らす期間限定のライトアップが毎月のよう に実施されています。
夜間特別公開(不定期):冬の「光と水」をテーマにした演出など、世界遺産登録の節目や季節に合わせて特別な夜間公開が行われることがあります。

和船の運航:姫路城の内堀を伝統的な木造和船で巡り、水面から城壁を見上げることができる体験です。技術保存と後継者育成も目的として行われています。
施設無料開放日:特定の記念日(城の日や世界遺産登録記念日など)には、姫路城や周辺施設が無料で一般開放されることがあります。
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